- Vol.2 - 

(2003年02月号)

ここに銃があります。 ある人は注意深く手に取り、またある人は何も考えず手に取ります。 その人の持っている知識や習慣で、意識して行動する場合と無意識のうちに行動した場合には、まるっきり違った結果となって現れるのです。


 日本において銃とは特殊なものです。目にするといえばまずおもちゃの銃でしょう。
おもちゃの銃しか知らない国民と、そうではない国民とでは、銃に対する知識が違うのは当たり前のことです。

 かたやおもちゃの延長として、もう一方では非常に危険なものとして扱うことでしょう。
しかし、非常に危険なものであっても、先に述べた知識や習慣によっては、「安全なもの」「危険なもの」と両極端になってしまうのです。


 銃自体は適切に扱えば安全なものだと思います。
が、無意識のうちに行なったちょっとした行動が恐ろしい結果を招くのも事実です。 

私は仕事柄、馴染みのトイガンショップによく行くのですが、お客さんがディスプレイしている銃の銃口を覗き込んだり、不用意に引き金を引いたりするのをよく見かけます。 その銃に弾が入っていたら、と思うとゾッとします。
日本における銃の認識とはこのレベルなのかも知れません。

 前回号でも紹介しましたが、現在私は、悪役商会の俳優としてTVや映画に出演させてもらっています。
と同時に舞台などで扱われる銃器類の貸し出しや、拳銃殺陣師としても仕事をしています。
私の行く現場では銃器類を扱うシーンがけっこうあります。 

ここでいつも思うことは、俳優さん達の銃に対する知識が乏しいということです。 
小道具の銃を渡されて撮影の合間に引き金を引いてしまう方も少なくありません。 銃が空っぽであるのか弾が込められているのかの意識が薄いのです。

現場でプロップ屋さんが俳優に銃を渡すとき、通常は既に発砲できる状態になっています。
「もう弾が入ってますよ。」「注意してくださいね。」などと言われているのですが、それでも何故か引き金を引いてしまう・・・本番中でもあらぬところで銃声が聞こえる。
誰とは言いませんが・・・。 
最近では本番直前までトリガーガードの両サイドにガムテープを貼り、引き金に指が掛からないようにされている場合が多いです。 

また銃を撃つときに口発砲することがあるでしょうか?
日本の現場ではリハーサルでは発砲できず、口で「パンパン」「バンバン」などと銃声を発しています。そのクセで本番中でも口が動いている役者さんがいます。
誰とは言いませんが・・・。 

構え方も分からず、自己流でカッコイイ?と思っているフォームで銃を撃つ方もいます。
誰とは言いませんが・・・。 

生意気なようですが、これじゃあ良いガンファイトシーンが少ないのは当たり前なのではないでしょうか。
マニアックな意見と言われればそれまでですが、我々俳優は少なからず見る側に影響を与えていると思います。
あの俳優が銃をこんな風に撃っていた、と頭にインプットされれば、その人が何かの機会で実銃を手にした時・・・。 

私が行っているハンドガンセミナーでは、必ず銃の安全性についての講義を行います。
銃に慣れ親しんでいると思っている人に対してもです。
なまじっか銃に馴染んだ人の、銃に対する心の余裕が油断を招くからです。 
銃の安全性というハードルを越えない限り、銃を理解できないのではないでしょうか。 

セミナーで使っている銃はモデルガンエアーソフトガンです。
銃のリコイルを疑似体験してもらうためにガスブローバックガンを使用しますが、それ以外では当然エンプティーガンの状態で練習を行います。 
最初に銃の安全を確認し、ホルスターからの抜き撃ち(ドライファイヤー)を行います。
銃を抜いて、どこでセフティを解除し、いつトリガーに指を掛けるのかを細かくチェックしていきます。 
ホルスターから銃を抜く瞬間に自分で自分の身体の一部を撃ってしまう事故が起きやすいからです。これがブーツショットと言われるものです。 
撮影現場であればNGで笑って終わりですが、実銃であれば笑えません。実際に実銃でも、自分のわき腹をえぐってしまったり、太ももに線をいれたりする事故が起きているようです。

セフティを解除するタイミングは自分の身体の軸から銃口が外れた瞬間です。トリガーに指を掛けるのはその次の瞬間、ほぼ同じタイミングです。
そう覚えておけば、オートマチックであってもリボルバーであっても対処できます。

銃の安全性については、いろんな書物で目にすることができます。
読者の皆さんなら、今更と思われるでしょうが、銃の安全性について再認識をしてみてはいかがでしょう。


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銃とのファースト・コンタクト。
ここで全てが決まります。

引き金に指が触れないよう注意!

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銃を抜き、
身体から銃口が離れ
セフティを解除した瞬間。
ここから引き金に指がかかります。

左手のポジションにも注意。


v2_3.jpg (58069 バイト)抜いた瞬間、引き金に指が掛かる
悪い例。

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銃口でターゲットを押す感覚

引き金を引く