(2002年12月号)

「お控えなすって。
軒下三寸借りうけやして、失礼さんにござんす。
皆様がたにはお初にお目にかかります。
私、悪役商会に草鞋を脱いでいる、西中節也と申します。
若輩者ですが、縁あって本誌にて連載をさせて頂くことになりました。
以後万端お見知りおきのほど、よろしゅうお頼み申します。」

- Vol.1 - 


 さて、突然の挨拶で始まった『俳優から視たGunの世界』ですが、今までとは違った観点で銃の世界を覗いてみようと思います。

私は先ほど述べたように悪役商会の俳優です。それと同時に舞台などで使われる銃器類の貸出し及び、それに伴う特殊効果、そして拳銃殺陣師としての仕事もさせてもらっています。

ここで"拳銃殺陣師"という耳慣れない言葉が出てきました。 時代劇であれば、刀を使った立ち回りの手をつけるのが殺陣師です。
同じように、銃を使ったアクションの手をつけていくのが拳銃殺陣師の仕事です。
銃を取り扱う場合の注意事項をはじめ、銃の構え方・撃ち方などを教え、作品の中で銃を効果的に引き立たせるのが拳銃殺陣師の役目です。


が、現在TV・映画の現場では、そのような銃のプロフェッショナルがほとんどいないのが現状です。
外国映画のガンファイトシーンを、意味も分からずそのまま、それも上っ面だけをコピーした作品が多いのも仕方がないと思います。
そう感じているのは本誌読者の皆さんの中にもいらっしゃるのではないでしょうか。

日本における、撮影現場などでの銃の使われ方・銃を扱う俳優の表現能力には、いつも首を傾げます。
TV・映画は、所詮、娯楽なのですが、観た人達に銃の間違った認識だけは与えてもらいたくないと思います。

拳銃殺陣師としての仕事をする時、私は銃の安全性から入ります。
プロップガンといえど、至近距離であれば火傷などの怪我に繋がるからです。 銃を危険な物と認識してもらえれば、俳優さん達は自ずと銃を慎重に扱うようになります。
それが銃をリアルに見せる第一歩だと思います。

今回4丁のプロップガンを紹介します。いずれもTVや舞台の現場で使用したものです。

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 S&W・M65・4inch、通称"八名スペシャル"。 舞台などで、わがオヤジ・八名信夫が使用しているものです。オヤジはスムーズなトリガープルを好みます。そのためS&Wを選択しました。一時期はコルトのローマン系を使っていましたが、あれはトリガーが重いですよね。 もともと軽いトリガープルのS&Wですが、内部の各パーツを摩擦による抵抗を減らすため鏡面仕上げにし、スプリングも調整してあります。
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コルトローマン(改)・ディテクティブ風、通称"キース・スペシャル"
。 長塚京三さんが使用した銃です。顔合わせの時に何丁か銃を用意していったのですが、すかさず手を伸ばしてくれたのがこの銃です。独特のウェザリング処理が通好みの仕上げで、製作したのは俳優仲間のキース君です。 長塚氏の射撃技術は、さり気なくベーシックで、彼の持ち味とマッチしていました。
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コルトガバメント
。 主に私がTV・映画に出演する際に使っています。映画『ブラザー』の現場にも持ち込んだのですが、本誌でもおなじみのBIG SHOTさんに「たけしさんがガバを使うので・・・」ということでベレッタを渡されてしまいました。
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ピースメーカー
。 これも私が、バラエティ番組や舞台などで使用している銃です。時代設定のない場合であれば、いつもピースメーカーを選びます。不発の少ないこの銃は一番信頼がおけます。そして私が一番なじんでいる銃です。

私は、俳優だからこそわかる現場の経験をもとに、銃に対する正しい認識を広めたいと思っています。

俳優が本職なんですよ。 ふだん何をやっているかといえば、TV・映画・舞台・ショーなどなど。悪役商会の俳優は、悪役だけではなく、いろいろなことを要求されます。 歌やダンスまでこなします。
大変ですが、一つ一つの芸を磨いて行くのが俳優だと思います。

悪役商会ともども、今後の西中節也の活躍も楽しみにしてください。

また自分の夢を実現するために、若手の俳優を集めてハンドガン・セミナーもはじめました。
海外に出しても通用するガンファイトシーンを、また日本における銃の認識を高めるために。
どれだけの影響を及ぼせるのかわかりませんが、誰かが何かをはじめなければ何も変わらないのではないでしょうか。 当初は月1回、先月より月2回のペースで行っています。
セミナーには、俳優だけでなく、一般の人たちも参加してくれています。興味のある方はホームページにアクセスしてみてください。URLは、http://homepage2.nifty.com/cobra/ です。

それでは次回も楽しみにしてくださいね。